高齢者の運転免許の返納は交通事故を抑制しているのか？

本報告の目的は、自動車免許の返納が高齢者ドライバーによる死亡事故を、どの程度抑制出来ているのかを明らかにすることである。
自動車免許の返納が進めば、死亡事故も自ずと減少すると考えられるものの、自己の能力を十分に判断できない高齢者ドライバーほど、免許返納にも消極的だとすると、免許返納による死亡事故抑制効果は限定的である可能性もある。従って、免許返納が高齢者ドライバーによる死亡事故を抑制しているかどうかを、死亡事故に関する諸要因をコントロールしつつ、分析することには意義がある。
さらに、我が国では、団塊世代のすべての人々が後期高齢者を迎える2025年を目前としていることに注目すれば、高齢者ドライバーとそうしたドライバーとの関わりのある全ての人々からなる交通社会における安全性の確保は全ての人々にとって大きな問題と言える。こうしたことからも本分析を基にした対策等の検討には意義があると考える。